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コラム『クリプトマーケティング視点から見た中国市場概観』

中国はブロックチェーン・仮想通貨産業において、投資家、開発者を中心とした巨大なコミュニティを持ち、グローバルマーケットに対しても非常に大きな影響力を持っていることが世界の共通認識であることに異論の余地はないでしょう。しかし文化的、言語的障壁のために、中国情勢について正確に把握し、適切な戦略を実行することは極めて困難であり、これを達成している海外プロジェクトは本当に少ないと感じます。

本記事では、中国のクリプト市場の理解を深めるためのクリプトマーケティング視点から見た中国についての簡単なインサイトをシェアしたいと思います。

 

 


 

市場環境

まず市場環境について。中国では、アリババ社が世界最多のブロックチェーン技術関連特許を保有*1するなど、仮想通貨だけでなくブロックチェーン技術においてもグローバルレベルの質の高い研究、開発が行われています。またブロックチェーン技術に関連するプロジェクト、プロダクト、またメディアやツール、プラットフォームなど、あらゆるリソースの数において群を抜いています*2。そのためマーケティングにおいては、氾濫する情報やリソースの中で、何を選択し、それをどのように活用するかが肝要です。

 

習慣

中国の人々は、アジア諸国の中でも特にモバイルフレンドリーであり、また厳しい情報統制による伝統的メディアに対する不信感を背景として、人々はソーシャルメディアを積極的活用しています。さらに彼らは血縁的な結びつきが非常に強く、家族あるいは親しい友人以外に対する警戒心が強いことも、個々の人間関係をベースとしたバイラルの発生源であるソーシャルメディアが強い影響力を持つ理由の一つです。

 

メディア

中国には多くのポータルサイトがあり、ブロックチェーン、仮想通貨領域についても海外諸国と比較して圧倒的な数のメディアが存在しています。各メディアが取り扱う情報の特徴だけでなく、政治的なスタンスも様々であるため、プロモーションにおいては発信する情報の性質や内容を考慮しながら慎重にメディアを選定することが重要です。

 

中国には金盾、英語でグレートファイヤーウォールと呼ばれるネット検閲システムがあり、いくつかのグローバルなインターネットサービスは中国国内からアクセスすることができません。有名なものではGoogle、Facebook、Twitterなど、クリプトに関連するところではメッセンジャーアプリのTelegramなどが挙げられます。

 

そうした状況で彼らは、Telegramの代わりに微信 (Wechat) 上に多様なコミュニティを形成しています。Telegramと比べ、Wechatは1グループあたりの人数制限が500人と少ないため、より細分化されたコミュニティが無数に存在しています。その中で複数のコミュニティを管理するコミュニティリーダーが存在し、彼らが一定の影響力を持っています。

 

またグローバルのクリプトコミュニティで人気のあるTwitterの代わりとなるサービスとしては、微博 (Weibo) があります。Weiboユーザーは二十代以下の若年層の比率が多く、投稿される情報は金融・ビジネス関連というよりはカジュアルなものが多いため、クリプト関連情報のやり取りにWeiboがメインで使われることは多くありません。ただしWeiboの拡散性を活かし、Weibo上で話題になっている投稿がWechatを介してさらに広がることがあります。WechatやWeiboでは、過去に中国でICO(Initial Coin Offering)が流行した時期に、中国当局によってクリプト関連情報を扱うグループがBanされたことがある*3 ため、現在でも基本的にWechat、Weibo上でクリプト関連の情報は慎重に取り扱う必要があります。

 

大手メディア巴比特(babbit)が運営する链节点(Chain node)*4 のようなコミュニティプラットフォームも人気です。コミュニティプラットフォームはReddit(5ちゃんねるのような英語版掲示板サイト)やBitcointalk(ブロックチェーン・仮想通貨専門の掲示板サイト)のように掲示板で交流するだけでなく、イベントの募集やQ&A、ブロックチェーンに関する基礎知識や、専門的なチュートリアルまで揃った巨大なコミュニティプラットフォームになっています。こうしたプラットフォームは链节点の他にも数多く存在しており、人々がこうしたコミュニティを通じて、ブロックチェーンに関する正しい知識を学びながら、議論し、交流することで、業界の知識教養レベルをより高い水準に引き上げることに寄与しています。

 

トレンド

中国ではグローバルコミュニティの動向と同じ様に、BitcoinやEthereumなど主要なプロジェクトは高い人気があります。中国はマイニング領域で世界的に先駆的なポジションであるという意味で、PoW(Proof-of Work)通貨、またEOS、TRON、VeChainといった中国発のブロックチェーンプロジェクト、さらにそれらのプラットフォームで発行されるトークンも人気があります。さらに最近ではPolkadotが極めて高い注目を集めており、今後Polkadot上でローンチされるプロジェクトにも大きな注目が集まるでしょう。

また中国にはNode capital、Fembushi capital、FBG capitalといった世界的に著名なクリプト専門ファンドも数多く存在するため、そうしたファンドによる投資動向にも高い注目が寄せられています。ファンドが目を付け、投資しているプロジェクトはコミュニティからも高い関心を集めやすい傾向があります。2020年にはDeFi(Decentralized Finance)の世界的ブームが起こりましたが、これは中国でも例外ではなく、2021年も継続して注目されることになりそうです。2021年はまたクロスチェーンプラットフォ-ムも大きな注目すべきテーマとなっていきそうです。

 


 

まとめ

・中国ではソーシャルメディアやクチコミが主要な情報源である
・市場を理解した上で、的確なチャネル選定とクチコミ化しやすい手法が重要である
・規制や政治など、中国市場特有の注意すべき問題点がある

 

次回は韓国市場について書きます。

また下記のリンクでは、中国、韓国の市場動向の概要と英語圏のクリプトメディアの概要を見ることができます。

海外クリプト市場動向 ※2020年12月時点

 

 

*1 The Current State of Blockchain Patents (https://kisspatent.com/blockchain-patents-study)
*2 Nation leads world in blockchain projects (http://www.china.org.cn/business/2019-04/02/content_74636929.htm)
*3 腾讯回应多个区块链公号被封:涉嫌发布ICO等炒币信息,永久封停 (http://news.china.com.cn/2018-08/22/content_59655824.htm)
*4 链节点 (https://www.chainnode.com/)

 

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